親孝行とお年玉


それは日差しうららかな昼下がりのことでした。
引越の準備しなきゃなあ、いろんな手続とかしなきゃなあ、なんて思いながらも連日の疲労で体が動かず、ボーっとしていたのです。


するとおもむろに鳴る電話。
着信は実家の母親から。
つい最近実家に帰省していたばかり。
なのにこんな時間に鳴る電話。


これはっ!?
すわ一大事かっ!?





「げんき〜?」


・・・とりあえず一大事ではなさそうですね。
でもつい最近会ったばかりじゃん。
元気は元気だよ。
どしたの?
「あのさあ、車買って。



・・


まあ・・・うん・・・。
えーと・・・あのね・・・






その突拍子もないお年玉のねだり方は何?




「車壊れちゃって。買い替えようと思って知り合いのディーラー呼んだら、明日まで初売りで安いんだって。」


・・・で?


「今から契約していい?」




えーと・・・まあ・・・
田舎だから車ないと生活できないよね。
大変だね。


でもね、
物事には順序ってものがあると思うの、僕。




まずはね、車壊れそうだって前々から言ってたでしょ。
その時点で買い替えについて考えてね。
ある程度目星をつけてからそういう相談を持ってくるといいと思うよ。
少なくともディーラーさんを目の前にして契約寸前におねだりしてくるっていうのはね、ちょっと違うと思うんですよ、僕は。



と、ひととおり説教したところで。


まあ・・・いいよ。
こんな、孫を抱かせてあげることすらできない息子のせめてもの親孝行です。
今までお世話になってきた30年間への、ささやかな御礼。
こんなことじゃ今まで受けてきた恩のほんの一部しか返せないと思うけど。
少しでも役に立てれば嬉しいです。
大事に乗ってね。


「じゃ、契約するね。じゃあね。」




・・・ねえ、
「ありがとう」は?
まったく、困ったもんですね、ホントに。






さて、こんな母親ですが、
孫を抱かせてあげることのできる人を引き続き募集しているわけですが。