旅行1日目 「密輸」


ほんの出来心だったんです。
悪気はなかったんです。



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それは、あまりにも唐突に判明した事実でした。




意気揚々と自宅を出発。
2時間ほどかけて成田へ到着し、スーツケースを預け、手荷物検査を通過し。
そして人生初の入国審査をくぐり抜けた先に、その看板はありました。






皆さんご存知でしたか?



(動揺して看板の写真撮れなかったので、HPにて代用しています。)




肉製品って国外に持ち出したらいけないんですって。
旅行会社からの注意事項やガイドブックにも書いてなかった気がするのですが…。






今回イギリスに行くにあたり、現地でお世話になる友人あてにお土産を買いに行ったのは2日前。
何がいいか考えた挙句、ここはやはり純和風なものが良いのではないかと思い、買ったのが、








牛肉佃煮詰め合わせ。






アウト…ですよね…。
でももうスーツケースに入っちゃってるんですよ…。
知ってたら隣の「とらや」の水羊羹とかにしたのに。





さあ困りました。
気づかなかったフリしてゴリ押ししてみようか?とも考えましたが、そこまでの根性はなく。
多分申告する先としては違うかもしれないと思いながらも、近くにいた税関の方(女性)に話しかけました。






「あの〜…そこで牛肉製品持ち出したらダメだって看板見たんですけど…。」


『(ニコッとしながら)はい。検疫が必要になりますね。』


「スーツケースに「牛肉の佃煮詰め合わせ」なんて物が入ってるんですけど。」


『(急に厳しい目になり)預ける時に航空会社の方に確認されませんでしたか?』


「いや、壊れやすいものや貴重品がないか聞かれただけで…。とりあえずスーツケース出せるんなら中から取り出したいと思うんですが、多分無理だと思うので、このまま出発していいでしょうか?」


『ダメです。出国は認められません。






密輸ですから。








人生初の海外旅行がいきなり前科者への片道切符になりそうな予感。





「いや…。何とか出国は認めていただけないでしょうか…?」


『…。わかりました。農林水産省の動物検疫に連絡しておきますから、しばらくロビーでお待ちください。今回は申告があったものとしますので。』






とりあえず搭乗ロビーに向かったのですが、もう気が気じゃありませんでね。
ホント何とか出国だけでも認めてくれないかなあ…と。





30分ほど待った頃、私の名前が呼び出されました。
身に覚えがあり過ぎでしたので、カウンターへ一直線。
そこには動物検疫所の方が2名。
ドキドキが止まらない。





だったんですが…。
むしろ係員の方の方が平身低頭で。


『申し訳ありませんがそういう規則なんですよ。』


「いや、知らなかったとはいえ、規則をゴリ押しで破るつもりはありませんし、検疫今から受けるわけにもいかないでしょうから。どうしたらいいかだけ教えてください。」


『ええ。ですから今回は今からお荷物を出すこともできないので、出国はOKとします。ただし、必ず到着地の空港で牛肉製品を持っていることを申告してくださいね。』


とのことでした。




とりあえず「サイトシーイング」とか言えば済むものだと思っていた入国審査に、とんでもないボスキャラ登場です。
英語で「検疫」って?「うっかりして」って?
ヒマつぶしにDSとか持ってきてんだから、「えいご漬け」とか買っときゃよかった…。
レイトン先生とか買った2日前の自分を叱ってやりたい。





ロンドン、ヒースロー空港までの12時間。
気が気じゃない時間を過ごしたのでした。
強制送還されないといいなあ…と。