スーペル・ピッポ


『何度DFライン上での「無駄走り」を繰り返してきただろう。しかし90分の中で、それは必ず結実する。』
by WCCF2004-2005 No.157 Filippo Inzaghi

インザーギといえば、ひたすらDFの裏への飛び出しを狙い続けてゴールを奪う、という愚直なまでのストライカー。
端整な顔立ちとは裏腹に、怪我などで非常に多くの苦労をしてきました。
それでいてかなりの人格者(らしいです)。


昨日の試合、まさに彼らしさが出た試合だったと思います。
裏を狙い続けてオフサイドになること数回。
強引な体勢からもシュートを打ち、防がれ、外れること数回。
それでも貪欲にゴールに向かい続け、最後はパワープレーに出たチェコのDF3枚をあざ笑うように裏への抜け出しを決めました。
そしてGKと1対1に。
右にバロンがフリーでいたし、軽くパスすれば100%決められた場面。
しかし彼はパスを出しませんでした。
なぜか見ている僕も「ああ、インザーギはパス出さないな。」と思いました。
キーパーをかわした時、危うく手に触れそうでした。
それでも彼は、「自分の」ゴールにこだわりました。
どこかの国のFWに見せてやりたいと思いましたw。


ミランで大怪我から復帰し、ダイビングヘッドで久方ぶりのゴールを決めた時、彼は試合後に人目もはばからず号泣していました。
「ああ、インザーギらしいゴールだな。」と思いました。
今回もそう思いました。


でも今回の彼に涙はありませんでした。
「これからみんなでお祝いをするんだ。」と無邪気なまでの笑顔で記者に語ってロッカールームに去って行きました。
そんな彼だから、みんな大好きなんだと思いました。


32歳の彼にとっては、今回が最後のワールドカップになるでしょう。
でも最後の最後でイタリア代表の座を掴み取り、短い時間の中で確実に結果を出しました。
もしかしたらイタリア浮沈の鍵は、ジラルディーノでもトッティでもなく、彼が握っているのかもしれません。


「スーペル・ピッポ」と呼ばれた男は、今、人生最高の時を迎えようとしています。